賃借人が、引続き建物を使用できるかは、抵当権の設定登記と賃貸借物の引渡しの後先で優劣が決まります。

【抵当権設定登記後に借りた場合】
賃貸借物の引渡しが抵当権の設定登記より後の場合は、買受人は賃借人に引渡し（明渡し）を請求できます。（賃貸借が競売開始前である）賃借人（抵当建物使用者）は、買受人が競落後6か月間は、賃料相当の金員を支払って建物を使用できます（民法395条）。しかし、6か月過ぎたら明渡す必要があります。敷金返還義務は、買受人には引き継がれません。退去の際、賃借人は元の貸主に敷金を返還請求するしかありませんが、元の貸主は強制執行を受けるくらいですから支払い能力はないと考えるべきです。

【抵当権設定登記前に借りた場合】
賃貸借物の引渡しが抵当権設定登記より前の場合は、賃借人は賃料を支払って引続き建物を借りることができます。敷金返還義務は、買受人に引き継がれます。退去の際、賃借人は買受人（新所有者）に敷金を返還請求できます。